那須高原の躑躅を尋ねた後、大田原市のビジネスホテル「アジサイ」に宿泊する。
ホテル「アジサイ」は東北自動車道の西那須野インターに近く、今日の目的地の黒羽にも近い。
ビジネスホテルにも拘らず、部屋も朝食も合格ラインで、コストパフォーマンスも良い。
ホテルから、「芭蕉の里 くろばね」の石柱が建つ大田原市黒羽庁舎へ。
黒羽は奥の細道で、芭蕉が最も長く滞在した地として知られていて、是非、訪れたいと思っていた。
黒羽は最近、吉永小百合が紹介する、JR東日本の「大人の休日倶楽部」で取り上げられた。
黒羽庁舎を覗き、職員から、黒羽のパンフレットを頂き説明して貰う。
黒羽庁舎を出て、右に進み、交差点で更に右折すると大雄寺に至る。
丘の上に続く道を上ると、眼下に黒羽庁舎の駐車場が見える。
芭蕉が歩いた道に出ると、羽黒小学校の前に、武家屋敷の門である「侍門」がある。
この侍門は黒羽藩主大関家の重臣大沼家の侍門であった。
芭蕉が歩いたと云われている、黒羽小学校の西側の道を北に進む。
現在でもこの辺りの道は、芭蕉が訪れた当時の面影を深く残している。
この道は「芭蕉の里大宿街道」として、道と川百選に選ばれている。
大宿街道を北に進むと、左手に、大雄寺、芭蕉公園、旧浄法寺邸など芭蕉縁の地がある
。
600年以上の歴史を持つ曹洞宗の禅寺「黒羽山大雄寺」の前に来る。
参道脇のラカンの丘には、石仏十六羅漢像が奉安されている。
長い石段を登ると、両脇に仁王像が立ち、やがて山門の前に出る。
大雄寺は1404年に余瀬白旗城内に創建されたのが始まりである。
山門を潜り石段を登ると左手に、写経・一石一字経の納経所である。 石仏合掌観音像も立っている。
総門が本堂の正面に建っている。 門は、左右に、回廊が取り付けられている。
萱葺き屋根の門と回廊共に重文である。
大雄寺の本堂に参拝する。 本尊は釈迦如来座像である。
大雄寺は1448年に、黒羽藩主第10代大関忠増により再建された。
現在の大雄寺は1448年再建の伽藍で、現在まで保存されている。
大雄寺は室町期の様式を今に伝える総茅葺屋根の禅寺である
大雄寺の禅堂は、宝冠釈迦座像を聖僧とし、上間、下間の単を有し、本格的な禅道場である。
国重要文化財指定の萱葺き屋根の鐘楼堂では、大晦日には除夜の鐘が鳴らされる。
同じく重文の大雄寺の経堂は、一切経4500巻を輪蔵内に納める土蔵造りの建物である。
大雄寺の参拝を終え総門を出る。 大雄寺には「枕返しの幽霊」伝説と掛け軸がある。
境内一面に咲き誇っているシャガを見ながら芭蕉の道に戻る。
大雄寺を出て直ぐ左手には、白旗不動尊がある。
黒羽に於ける芭蕉の道とは、大雄寺の参道付近から浄法寺雪桃邸跡を経て芭蕉の広場に続く約800mの遊歩道である。
元禄2年(1689年)5月22日に芭蕉は浄法寺桃雪邸に招かれた。
芭蕉は奥の細道の旅で、最も長い滞在の13泊も、黒羽に逗留した。
桃雪邸には、8泊もして、「山も庭にうごきいるるや夏座敷」の句を残した。
6月2日も宿泊し、私共が、2016年8月31日に訪れた那須の殺生石に翌日向かった。
大雄寺
地図の中央の矢印が大雄寺です <栃木県大田原市黒羽田町にて>
大雄寺周辺の風景を、下記の「大雄寺」のボタンをクリックして41枚のスライド写真でご覧ください。
浄法寺桃雪邸から丘を下って、史蹟黒羽城の黒門跡へ。
黒門跡には、「田や麦や 中にも夏の ほととぎす」の句碑がある。
黒門跡から史蹟黒羽城の土塁水掘跡を通って「黒羽芭蕉の館」に向かう。
大田原市黒羽芭蕉の館は、郷土の歴史、文学、人文に関する資料の収集及び整理保存、公開を行っている。
芭蕉の館は、黒羽城三の丸跡に建っていて、館内は撮影禁止である。
館内の庭には、芭蕉が馬に跨り曽良を従えているブロンズ像がある。
館内には説明員も見当たらず、展示資料も奥の道全体の内容が主で物足りなかった。
建物の下を潜って北に向かい、石段を上って本丸跡へ。
本丸跡に向かうには、深くて大きな空濠があり、あじさい橋が架かっている。 黒羽城の本丸跡に至る。
黒羽城址公園及びその周辺地区は紫陽花の名所になっていて、今年も6月16日から紫陽花まつりが開催される。
黒羽城は1576年に大関高増が白旗城から遷したのが始まりである。
本丸跡の北側には能舞台がある。 1590年の小田原征伐の際、主家の那須氏は参陣せず改易されたが、
小田原征伐の際、大関氏の高増は、弟の息子大田原晴清と共に参陣し、秀吉より所領を安堵された。
関ヶ原の戦いでは、大関氏は東軍に与したので、家康に加増され大名になった。
黒羽城では、江戸時代を通じ、関東では珍しく外様大名の大関氏の支配が幕末まで続いた。
黒羽城本丸跡は、我々以外は観光客の姿も無く、静かな公園である。
本丸跡の西側には、新しく建てられた物見櫓が見える。
物見櫓に昇って見る。 黒羽城は西に那珂川、東に松葉川が流れる丘陵の上にある。
物見櫓に昇って西を望む。 崖の下に那珂川が流れている。
黒羽城は、本丸、中の丸、北の丸からなる内城を三の丸が囲むように配置されている。
黒羽城址で古を偲んだ後、再び、あじさい橋を渡って馬出廓へ。
馬出廓にある東屋の付近は、紫陽花まつりの中心だろう。
芭蕉の道を芭蕉の館から芭蕉の広場へと向かう。 途中に芭蕉と曽良の句碑がある。
芭蕉の広場から芭蕉公園に向かう芭蕉の道で、芭蕉の広場から坂を降りる辺りは竹藪で覆われている。
竹藪の中の道に人の姿は無いが、脇の表示板に「JR大人の休日倶楽部「黒羽の芭蕉編」ロケ地」とある。
吉永小百合のJR東日本のコマーシャルに出てくる竹林がこの場所で撮影された。
竹林を出ると、芭蕉の道は、茶房「城山」の前に出る。
再び、大田原市黒羽庁舎が見える丘に出る。
駐車場に戻り、JR大人の休日倶楽部「黒羽の芭蕉編」で一躍名所になった「雲厳寺」に向かう。
芭蕉の道の竹林
地図の中央の矢印が竹林です <栃木県大田原市前田にて>
芭蕉の道と黒羽城を、下記の「芭蕉の道と黒羽城」の
ボタンをクリックして34枚のスライド写真でご覧ください。
国道461号線を東に走り、JR大人の休日倶楽部のコマーシャルで話題になった雲厳寺に到着。
雲厳寺の境内に入ると、山門の正面に朱塗りの反り橋がある。
赤い橋の上で、ピンクの傘をさして立つ女性の姿がある。 吉永小百合の再現である。
ロケ地探訪に来た女性グループに共感し、想い出にと写真を撮って貰う。
胸の前には、吉永小百合のセリフ「大人になったらしたいこと」「大人の休日倶楽部」を掲げている。
コマーシャルでは、芭蕉の道の竹林に続いて、雲厳寺のこの爪鉄橋が出て来る。
武茂川に架かる爪鉄橋を渡って、石段の上にある山門を目指す。
この春は、JR東日本のデステネーションキャンペーンで雲厳寺が話題になっている。
臨済宗妙心寺派の名刹「雲巌寺」は八溝山地の懐深く、清らかな渓流に沿う境地にある。
雲巌寺は1283年に、北条時宗を大檀那として仏国国師が開山した。
江戸時代前期に再建された、二層楼門入母屋造りの雲巌寺の山門を潜ると、
正面に、1922年に再建された仏殿がある。
仏殿の後に方丈があり、山門と共に一直線に並んでいる。
雲巌寺は永平寺などと並んで、日本四大禅道場の一つである。
寺は禅修行のための道場で、拝観はできるが堂内は立ち入り禁止である。
観光寺院でも無く、交通の便も悪いので、今までは訪れる人が少なかった。
先の黄金週間では、吉永小百合のコマーシャルに釣られて人々がどっと訪れた。
観光寺院でもない雲巌寺周辺には、車で近づくことも出来なかったと云う。
雲巌寺の一番奥にある建物の獅子王殿(方丈)は雲巌寺の方丈である。
松尾芭蕉は、1689年に雲巌寺を訪れている。
芭蕉は仏頂国師を偲び「句」を残している。 芭蕉の句は「啄木鳥も 庵は破らず 夏木立」である。
再び、山門に戻る。 吉永小百合の「大人の休日倶楽部」の場面を思い出しながら石段を降りる。
雲厳寺の朱塗りの爪鉄橋を最後に雲厳寺を離れる。
雲巌寺の爪鉄橋
地図の中央の矢印が爪鉄橋です <栃木県大田原市雲岩寺にて>
雲巌寺を、下記の「雲巌寺」のボタンをクリックして36枚のスライド写真でご覧ください。
雲巌寺を出て、国道461号黒羽街道を西に走る途中で、
右手に、道の駅「那須与一の郷」がある。
道の駅の入口では与一の騎馬像が出迎えてくれる。 道の駅の各施設の屋根は扇型になっている。
道の駅の北側には、那須与一縁の那須神社がある。
仁徳天皇時代の創立で、更に、坂上田村麻呂が応神天皇を祀って八幡宮にしたと伝えられている。
芭蕉が黒羽滞在時に訪れたと云われ、「奥の細道の風景地」に指定されている。
長い参道を進むと、1642年に大関高増により建立された楼門がある。
大関高増は黒羽藩3代藩主で現在の社殿は彼の整備による。
1577年に大関氏によって本殿、拝殿、楼門が再興されたと社記は伝えている。
創建時は仁王像が並んでいたが、現在は、随神が置かれている。
1641年に建立された、那須神社の拝殿と楼門は、国の重要文化財に指定されている。
那須神社に参拝。 社宝には那須与一が奉納した「太刀銘弘綱」が伝来している。
那須与一は屋島での戦功により那須の総領になっている。
神社では、秋の例大祭では流鏑馬が行われている。
神社境内には、樹齢200年の那須神社の桧である、「与一の里おおたわら名木」がある。
「手水舟」は1642年に大関高増が那須神社に奉納した、重要文化財である。
本殿の北側にある仁徳天皇時代に築かれたと云われている「金丸塚」を最後に
那須神社の参拝を終え、帰路に就く。
那須神社
地図の中央の矢印が那須神社です <栃木県大田原市南金丸にて>
那須神社を、下記の「那須神社」の
ボタンをクリックして19枚のスライド写真でご覧ください。