ガンジス川の沐浴
2004年1月31日
ラジェンドラ・プラサッド・ガードで沐浴するヒンズー教徒(左)
ベナレス(バラナシ)に行くなら、遠藤周作の「深い河」を読んだら、といわれたが、結局、読み終えたのは帰国後になった。
北インドは人生観を変えると言われるが、遠藤周作の小説の強烈な刺激と、現地を自分の目で見ることで、
久しぶりに外国旅行をしたという実感をもった。
「クラークス・ベナレス・ホテル」を早朝バスで出発し、ルクサ道路の終点のゴードリア交差点で
バスを降りる。 未だ暗いダッシャーシュワメド・ガード道路をベナレスで一番知られている
ダッシャーシュワメド・ガードまで歩く。 そこで、観光客向けのボートに乗って
沐浴する人が最も多い、日の出の時刻に、沐浴する人々を船上から眺める。
我々の思いこみと違い、北インドの冬は寒い。 昼は気温が上昇するも、
夜明け前の最低気温は5度前後であり、河の中に手を入れみたが、ガンジス(ガンガー)河の水は冷たい。
それでも、贖罪と来世の幸福を求めて、国中のヒンズー教徒がここに集まってくる。
特に、死後、灰をこの河に流すことで、来世の幸運が約束されるというので、ここに来て、死を待つ人が
大勢いる。
カーストの底辺で生活する人を見れば、来世だけが唯一の望みであることが納得できる。
帰国後、なぜ、下克上が起きないのかと聞かれ、上は人間ならば可能だが、神には反抗は出来ないのでは
と答えておいた。
<ベナレスにて>
ガンガーで沐浴し罪や汚れを洗い清める母娘(右)
乾期にも拘わらず、突然、大粒の雨に見舞われ、急遽、予定を変更して最寄りの岸に上がり、
暫くの間雨宿りする。 小降りになったので、ツアーの一行が移動を始めたが、
この時、最後尾に付いていて、先行者を見失い、思わぬ体験をしてしまった。
太陽が昇るとともに、あれほど大勢いた観光客が、一斉に引き上げ、周りは、ヒンズー教徒のみの
世界になった。
見失った場所を動かずに待てば、必ず探しに来てくれるとの、山歩きの経験と確信から、
特に不安は感じなかったが、ネパールへの国際空港出発2時間前の限界時間が迫って来た頃には、
一人で帰ることになるのかなとの思いが頭を掠めた。
帰国後、2時間半も一人でガードで過ごし、その間、写真を思う存分撮ることが出来たと息子に話したら、
「ヒンズー教徒の人々の灰と一緒に、ガンジス川に流されて、誰知れずに、永遠に行方不明になるところ
だったのに」と、大いに脅された。
<ベナレスにて>